労働安全衛生法の一部を改正する法律【平成26年6月25日公布】
労働者の安全と衛生の基準を定めた労働安全衛生法が8年ぶりに改正されました。
主な改正ポイントは、化学物質のリスクを事前に察知して対応することと、メンタルヘルス対策の充実です。
化学物質管理のあり方の見直しは、特別規則の対象にされていない化学物質のうち、一定のリスクがあるもの等について、事業者に危険性または有害性等の調査を義務付けたのです。
メンタルヘルス対策の充実・強化は、事業者に対し医師・保健師によるストレス診断の実施を義務付け、必要に応じて作業の転換、労働時間の短縮など、適切な就業上の措置を講じなければならないこととされました。
労働安全衛生法の一部改正の経緯と目的
労働安全衛生法の前回の改正は8年前であり、この時はアスベスト問題を受けての改正でした。今回は、化学物質使用によるガン発生などの職業性疾病、精神障害の労災認定増加など、この8年間における労働者の安全衛生の課題が盛りこまれた内容となっています。具体的なポイントは以下となります。
1)化学物質管理のあり方の見直し
2)メンタルヘルス対策の充実・強化
3)受動喫煙防止対策の推進
4)重大な労働災害を繰り返す企業への対応
5)外国に立地する検査機関等への対応
6)規制・届出の見直し等
1)化学物質管理のあり方の見直し
特別規則の対象にされていない化学物質のうち、一定のリスクがあるもの等について、事業者にリスクアセスメント(危険性または有害性等の調査)が義務付けられました。
すでにアスベストなど重大な健康障害を引き起こす8物質は製造が禁止され、また、それに準じて健康障害が多発しているPCB等の116物質は個別に規制をされています。 さらに、116物質を含む640物質については、安全データシート(SDS)の交付が義務付けられています。
リスクアセスメントの対象物質には、安全データーシート(SDS)交付義務のある640物質のうち、これまで個別に規制されてこなかった物質を想定されているようです。
2)メンタルヘルス対策の充実・強化
労働者の心理的な負担の程度を把握するため、医師等による検査の実施を従業員50人以上の事業者に義務付けされました。
これに伴い事業者は、検査結果を通知された労働者の希望に応じて医師による面接指導を実施し、その結果を踏まえ医師の意見を聴いた上で、必要な場合には作業の転換など適切な就業上の措置を講じなければなりません。
なお、医師等は本人の同意なく、その結果を事業者に提供してはならないこととされました。
3)受動喫煙防止対策の推進
受動喫煙を防止するため、事業者及び事業場の実情に応じ適切な措置を講ずる受動喫煙防止義務が規定されました。ただし、罰則のない努力義務とされています。
これに伴い、国は、受動喫煙防止対策に取り組む事業者に対し、喫煙専用室の設置の促進等の必要な援助に努めるものとされました。
4)重大な労働災害を繰り返す企業への対応
安全衛生関係法令に違反し、一定期間内に同様の重大な労働災害を複数の事業場で繰り返し発生させた企業に対し、その事業場の安全または衛生に関する改善計画を作成して厚生労働大臣に提出するよう指示できるようになりました。
企業が計画の作成指示や変更指示に従わない場合や、改善計画を守っていないと認められる場合に厚生労働大臣は勧告を行い、勧告に従わない場合には企業名を公表できるようになりました。
5)外国に立地する検査機関等への対応
ボイラーなど特に危険性が高い機械を製造等する際に受けなければならないこととされている検査等を行う機関のうち、外国に立地する機関についても登録を受けられることになりました。
6)規制・届出の見直し等
一定の業種・規模の工場等で、建設物、機械等の設置、移転等を行う場合にはその工事着手の30日前までに所轄労働基準監督署長に計画の届出をしなければなりませんでした。今回この事前届出が廃止になりました。
今回の制度廃止により、企業は自己責任において建設物や機械等の設置、移転、変更を行うこととなります。
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